市街化調整区域は、都市計画法によって「市街化を抑制すべき区域」として指定されたエリアで、原則として住宅の新築が制限されています。相模原市の場合、旧相模原市域・旧城山町域は「相模原都市計画区域」として線引きされており市街化調整区域が含まれます。一方、旧津久井町・旧相模湖町・旧藤野町の区域は「相模湖津久井都市計画区域」で線引きそのものが行われていない非線引き区域のため、市街化調整区域とは別のルールが適用されます。両者を混同しないよう、まず土地がどの都市計画区域に属するかを確認してください。
「相続した実家の土地が調整区域だった」「親が住んでいた古家を壊して建て替えたい」というケースは珍しくありません。条件を満たせば建築できる例外もありますが、対応できる工務店・ハウスメーカーは限られます。このページでは、相模原の調整区域で家を建てる方法と注意点を整理します。
市街化調整区域とは
都市計画法では、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分ける線引き制度を採用しています。市街化区域は市街化を促進するエリアで、住宅・商業施設・工業施設などが計画的に建てられます。一方、市街化調整区域は市街化を抑制するエリアで、原則として建物の新築・増築が制限されます。
線引き制度の目的は、都市の無秩序な拡大を防ぎ、計画的な土地利用を実現することです。市街化区域では公共施設・道路・上下水道などのインフラが整備され、住宅地として開発されますが、調整区域では自然環境・農地・森林が保全されます。
相模原市の調整区域・非線引き区域の分布
相模原市は3つの都市計画区域に分かれており、土地の場所によって規制内容が大きく異なります。土地を検討する際は、まずどの区域に該当するかを確認してください。
相模原都市計画区域(線引きあり)
旧相模原市全域+旧城山町全域。市街化区域と市街化調整区域に区分されています。
- 中央区・南区の大部分:市街化区域(用途地域あり)
- 市街化調整区域:中央区・南区の市街地外縁部、緑区東部(橋本・相原・大島・田名などの市街化区域の外側)、旧城山町域の一部に分布
緑区の市街化区域は、橋本・相原・城山中野・大島・田名などに集中しており、それ以外のエリアの一部が市街化調整区域となります。
相模湖津久井都市計画区域(線引きなし=非線引き区域)
旧津久井町(一部)・旧相模湖町全域・旧藤野町(一部)。市街化区域・市街化調整区域の区分はありません。原則として用途地域の指定もなく、市街化調整区域とは別のルール(開発許可制度の一部適用、建ぺい率・容積率・斜線などの形態制限あり)が適用されます。
津久井湖・相模湖周辺、藤野エリアの大部分は市街化調整区域ではなく非線引き区域です。「緑区=調整区域」と単純化せず、土地ごとに区域区分を必ず確認してください。
このページで主に扱うエリア
以下では、相模原都市計画区域の市街化調整区域での建築可能性について整理します。非線引き区域(旧津久井・相模湖・藤野)に土地をお持ちの方は、区域指定や開発許可の要否が異なるため、相模原市開発調整課(電話042-769-8250)への事前相談をおすすめします。
調整区域で建築可能な3パターン
調整区域は原則として住宅の新築が制限されますが、条件を満たせば建築できる例外があります。代表的なのは以下の3パターンです。
パターン1:既存宅地確認を受けた土地
市街化区域と市街化調整区域の線引きが行われる前から宅地として利用されていた土地(線引き前宅地)で、一定の条件を満たすものは「既存宅地」として扱われ、建築が認められます。
既存宅地として認められる条件は、概ね以下のとおりです。
- 線引き(相模原市の場合は1970年(昭和45年)6月10日)以前から宅地であった土地
- 50戸以上の連たんする集落の中にあること
- 都市計画法に基づく開発許可を必要としない要件を満たすこと
ただし、既存宅地の制度は法改正により適用範囲が縮小されており、現在は新規認定が難しいケースもあります。実家の土地が既存宅地に該当するかどうかは、相模原市開発調整課(電話042-769-8250)で個別に確認する必要があります。
パターン2:農家住宅
農業を営む方が、自身の農地に隣接する土地に住宅を建てる場合、農家住宅として建築が認められることがあります。これは農業を継続するために必要な居住として位置づけられるものです。
農家住宅として認められる条件は、概ね以下のとおりです。
- 申請者が農業を営んでいること(農業従事者証明など)
- 住宅が農地と一体的に利用されること
- 規模・用途が農業経営に必要な範囲であること
農家住宅は、農業を継続することが前提の制度です。建築後に農業をやめると、用途違反になる可能性があるため、長期的な営農計画も含めた判断が必要です。
パターン3:開発許可を経た建築
調整区域でも、開発許可を取得すれば一定の規模の住宅団地・分譲地を造成して建築することが可能です。これは大規模な開発事業者が手続きを行うのが一般的で、個人で開発許可を取って自宅を建てるケースは多くありません。
個人レベルで開発許可を活用する例としては、以下のようなケースがあります。
- 既存集落周辺での住宅建築(連たん要件を満たす場合)
- 高齢者・障害者などの介護目的で家族が近隣に建てる場合
- 自然災害により被災した方の代替住宅
調整区域で建築する際の手続きと期間
STEP1:建築可能性の事前相談
まず相模原市開発調整課(電話042-769-8250)に事前相談します。土地の所在地・現況・所有関係を伝え、建築可能性のパターン(既存宅地・農家住宅・開発許可)を判断してもらいます。この段階で「建築不可」の判断が出る土地もあります。
STEP2:必要書類の準備
建築可能性が確認できれば、申請に必要な書類を準備します。土地の登記情報、現況図、線引き前後の所有関係を示す資料、農家住宅の場合は営農証明など、ケースによって必要書類が異なります。
STEP3:申請・審査
必要書類を揃えて申請。市役所での審査を経て、建築可否が判断されます。申請から許可まで2〜6ヶ月かかることが一般的で、ケースによってはさらに長期化することもあります。
STEP4:建築確認申請
調整区域での建築許可が下りた後、通常の建築確認申請に進みます。ここから先は市街化区域での建築と同じプロセスです。
調整区域で建てる際のコスト要因
調整区域での建築は、市街化区域と比べて以下のコストが追加されることがあります。
申請関連費用
調整区域での建築許可申請には、行政書士費用、調査費用、図面作成費用などが追加でかかります。10〜50万円程度が目安です。
インフラ整備費用
調整区域では上下水道・電気・ガスのインフラが整備されていないことがあります。引き込み距離が長い場合、引き込み工事費が100〜300万円かかることも。事前に各インフラ事業者に問い合わせて費用を確認しておくと安心です。
地盤調査・改良費用
山間部・郊外では、地盤の状態が市街地と異なることがあります。地盤調査と必要に応じた改良費が、市街化区域より高めになる傾向があります。
工事車両アクセスの問題
狭い農道や私道を経由する立地では、工事車両のアクセスが制約されます。生コン車・クレーン車が直接入れず、特殊運搬や手運び搬入が必要になると、追加コストが発生します。
非線引き区域(旧津久井・相模湖・藤野)で建てる場合のポイント
旧津久井町・旧相模湖町・旧藤野町の区域が属する相模湖津久井都市計画区域は線引きなしで、市街化調整区域のような「原則建築不可」の制限はかかりません。個人の戸建住宅を新築する場合、調整区域のような許可(都市計画法第34条・第43条)は不要です。
ただし、まったく規制がないわけではなく、以下のルールが適用されます。
開発許可
非線引き区域では、1,000㎡(約300坪)以上の開発行為を伴う場合に都市計画法第29条による開発許可が必要です。個人の戸建住宅で1,000㎡を超えるケースは多くありませんが、複数区画の宅地造成を伴う場合は対象になります。
用途地域・建築形態制限
相模湖津久井都市計画区域には用途地域の指定がないのが原則で、用途による建物の制限はほぼかかりません。一方、相模原市は建築基準法の改正(平成13年)を受けて、用途地域の指定のない区域でも建ぺい率・容積率・斜線・日影規制の数値を独自に指定しています。土地ごとに指定値が異なるため、計画前に確認が必要です。
建築基準法上の道路(接道)
非線引き区域でも、建築基準法第43条の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接していること)は適用されます。山間部では建築基準法上の道路に接していない土地もあり、その場合は建築不可となるか、43条但し書き許可などの個別対応が必要です。
インフラ・地盤
上下水道・電気・ガスの整備状況、地盤の状態は調整区域同様に市街地より厳しいことが多く、引き込み工事費・地盤改良費が市街化区域より高くなる傾向があります。
非線引き区域の土地を検討中の方は、まず相模原市開発調整課(電話042-769-8250)と建築審査課(電話042-769-8254)に区域区分・接道・形態制限の確認をおすすめします。
調整区域でよくある誤解
誤解1:「親が住んでいる土地だから建てられるはず」
親世代が長年住んでいる古家がある土地でも、建替え時に建築不可になるケースがあります。古家が建てられた当時は規制が緩かった、線引き前から宅地利用されていた、などの個別事情があり、現在の制度で建替えが認められるかは別問題です。
誤解2:「土地を所有しているから自由に建てられる」
土地の所有権と建築可能性は別の問題です。調整区域では、土地を所有していても建築許可なしには家を建てられません。「自分の土地だから」という理由は通用しないため、必ず行政相談を経てから判断してください。
誤解3:「価格が安いから狙い目」
調整区域の土地は市街化区域より安いことが多いですが、建築できなければ意味がありません。建築可能性を確認する前に「価格が安いから」と契約すると、建築不可で土地を持て余すリスクがあります。
調整区域対応に強い会社を選ぶ
調整区域での建築は、行政との折衝・申請手続きの経験が必要です。対応できる工務店・ハウスメーカーは限られるため、調整区域での建築実績を公表している会社、または対応経験を初回相談で具体的に話せる会社を選ぶことが重要です。
必要に応じて、行政書士・宅建士などの専門家と連携できる会社が安心です。緑区の調整区域で土地を所有している方、検討している方は、まず相模原市開発調整課(042-769-8250)に行政相談し、その後で対応可能な会社に相談する流れがおすすめです。